中殿筋(ちゅうでんきん)の機能
中殿筋は、片足立ち姿勢で骨盤を安定させる重要な筋肉です。中殿筋が正常に機能していれば、歩いている最中に60%の力を発揮しています。静止状態での片足立ちの時は80%の力を発揮しています。
中殿筋の障害で引き起こされる症状
中殿筋が弱っていると、走る事が多いスポーツでは効率の良い身体の使い方ができなくなってしまうため、体力の消耗が激しくなったり、腰痛を引き起こしたりします。
また、中殿筋が弱いと、大腿骨が内旋位(ないせんい)になり、足が内側に向いてしまいます。そして、膝に外反の負荷がかかり、足首は回外(かいがい)します。さらには、骨盤を支える筋肉が上手く機能しなくなるので、骨盤の安定性が低下してしまいます。
片方の中殿筋が弱っている場合、反対側に身体を傾けてバランスを取ろうとする姿勢になります。このような姿勢では、腰痛や股関節痛のリスクが高くなります。腰、股関節周辺に痛みがある人の約70%に、中殿筋の左右差が存在するというリサーチ結果も出ています。ですので、腰痛の方は中殿筋の弱さが原因となっている場合も考えられます。
中殿筋障害を引き起こす要因
中殿筋は、筋力低下により障害を起こす危険性が高くなります。筋力低下を起こす要因は、使い過ぎによる疲労で、ストレッチされた状態、内転筋の過度な緊張、左右の脚の長さの違い、肥満や急な体重増加などが挙げられます。
中殿筋障害の男女差
女性の方が男性よりも骨盤が広いので、中殿筋が弱くなりやすいです。女性が中殿筋挫傷(ざしょう)を起す確率は、男性の3~5倍であるとも言われています。また、女性は、広い骨盤の影響で、膝の中にある前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい)にかかる負荷が大きく、恥骨結合の炎症や、IPバンド症候群、腰痛、転子滑液包炎(てんしかつえきほうえん)も起こりやすい傾向にあります。
中殿筋の筋挫傷
大転子の停止部の近位に痛みがあり、大腿骨を外転させる運動で痛みが強くなります。
中殿筋挫傷が起こりやすいスポーツ
走っている最中の、骨盤の左右への動揺を抑えるときに中殿筋が使われるのですが、このときの負荷により損傷することが多いです。ですので、ランナーやアメリカンフットボール、サッカーなどが挙げられます。また、キックやサイドステップの動作でも、中殿筋に負荷がかかるため損傷しやすくなります。
中殿筋のリサーチ結果
過去に、プロのサッカー選手を対象とした中殿筋の調査が行われました。その選手たちはどのようにトレーニングしたら良いのかを熟知し、専属トレーナーも付いていましたが、50%の人に中殿筋左右差が存在しました。その左右の力の差は約25%だったそうです。中殿筋の機能低下があると、筋のエネルギー消費が大きくなり、腰痛や膝痛、前十字靱帯の障害、アキレス腱炎、仙腸関節(せんちょうかんせつ)の問題が起こりやすくなります。機能低下がある中殿筋を鍛える事で、これらの怪我の予防やパフォーマンス力アップにつながります。